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※記載内容は、情報公開時点の法令並びに執筆者による情報に基づいています。

VOL.18「脱法シェアハウス」安全基準を満たさない違法・脱法のシェアハウス 執筆:住宅ジャーナリスト/山本久美子

2014年2月19日

居室に該当する事例(国土交通省の「違法貸しルーム対策に関する通知について」より転載)

居室に該当する事例(国土交通省の「違法貸しルーム対策に関する通知について」より転載)

脱法・違法への規制強化が進む一方、
健全なシェアハウスへの影響も

国土交通省はシェアハウスを「寄宿舎」に該当と通知

政府もすぐに対応策を講じた。国土交通省はまず、多人数の居住実態がありながら、防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物について、情報受付窓口を設けて情報提供を呼びかけた。違反の疑いがある建築物を把握した場合は、自治体などの判断で消防署と連携して立ち入り調査を行ったうえで、適切な是正措置を講じるよう要請した。

次いで、不動産業関係団体、建設業関係団体、建築士関係団体、マンション管理関係団体宛てに、疑いのある建築物の賃貸の仲介を行わないこと、工事を受注するといった事態を把握した際に情報提供を行うことなどを要請した。

さらには、平成25年9月6日付の通知において、こうした「事業者が入居者を募集し、自ら管理する建築物に複数人を居住させる」貸しルームは、従前用途や改修の有無にかかわらず、建築基準法の「寄宿舎」に該当するとした。また、同じ通知において、右図1~3のような間仕切壁を設けた区画は、「居室」に該当する点も明示した。

国土交通省は、こうした取り組みの状況を定期的に公表している。最新の平成26年1月24日に公表した結果によると、「建築基準法違反があり是正済の物件」が6件、「建築基準法違反があり是正指導中の物件」が499件、「建築基準法違反があり是正指導準備中の物件」が116件あり、合計621件の違法貸しルームがあったことになる。ほかに、無違反や閉鎖中などの物件が91件、調査中の物件が599件という状況だった。

健全なシェアハウスへの影響は?

国土交通省が「寄宿舎」など具体的な法解釈を提示したことで、脱法・違法なものの是正措置が進む一方で、健全なシェアハウスにもその影響が及んでいる。

既存のシェアハウスは、シェアハウスとして新築されたものもあるが、多くは古くなった共同住宅や一戸建てをシェアハウスに改修したもの。健全な事業者は自治体などに建築の確認を取りながらシェアハウスへの改修を行ってきたが、寄宿舎ではなく一戸建ての用途で判断されてきたケースなども多い。

今後シェアハウスへの改修を行う場合に、寄宿舎としての基準を満たす必要が生じるが、特に東京都のように、建築安全条例で共同住宅の居室は広さが7m2以上、道路の接道や窓先と隣地に一定の空地を設けることなどの制限を設けている場合は、改修ではなく建て替えでないと基準を満たせない事例が多くなる。

当面は、個別のシェアハウスの適法性を判断する自治体などと協議しながら、シェアハウスへの改修を進めていくことになるが、健全なシェアハウスの成長を阻害する要因にならないように、適切な基準の設定や法整備などを求める要望も出ている。



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